2008 Fiscal Year Annual Research Report
蕪村・樗良・暁台を中心とする中興期京都・伊勢俳壇の総合的研究
Project/Area Number |
18720052
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Research Institution | Ohkagakuen University |
Principal Investigator |
寺島 徹 Ohkagakuen University, 人文学部, 講師 (30410880)
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Keywords | 中興期俳諧 / 蕪村 / 暁台 / 樗良 / 蕉風復興運動 |
Research Abstract |
本年度は、これまで調査・翻刻してきた伊勢俳壇資料「逸漁文庫俳諧資料集」(綿屋文庫蔵)を含む、逸漁・暁台資料をもとに、術語「からび」を中心とした資料収集・分析を行った。逸漁文庫資料の安永2年の条に俳諧伝授の様が記されるが、この場において蕉門俳諧における「老」や「痩」の概念に通じる「からび」の措辞が見え、暁台の蕉風意識を探る上で新たな内容を含んでいることについて分析した。さらにこの調査・分析の過程で、あらたに暁台の幻住庵入庵資料『古奈无』(安永9年2月)の自筆断簡(架蔵)を発見した。この新資料において京都・尾張俳壇と近江俳壇との関係を探ることにより、暁台と蕪村の幻住庵における交渉(安永8年9月)について「からび」の面からも考察が可能になった。同資料の紹介をもとに研究発表「蕪村と暁台の交流-蕉風の「からび」を視座として」(東海近世文学会)を行った。また、昨年度までに調査していた尾西歴史民俗資料館蔵の磯足資料の整理も行い、磯足評『蕉門俳諧附合安波世鏡』には蕪村に対する批評の書入があり、「からび」についても言及がみられる点について分析を進めた。このような従来看過されてきた暁台周辺の資料を俎上にのせ、俳系の異なる暁台(伊勢派)と蕪村(江戸座)に通底していたと考えられる蕉風意識の一端についても検討し、「蕉風復興運動と加藤暁台-蕪村との交流をめぐって-」(日本近世文学会)として研究発表を行った。このほか樗良についても、「三浦樗良の連句評点について(1)」(蒼穹90号)等を発表、書誌的な調査や資料紹介を行った。
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