2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720055
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
滝川 幸司 Nara University, 文学部, 准教授 (80309525)
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Keywords | 平安前期 / 公的文学 / 天皇 / 宮廷詩宴 |
Research Abstract |
本研究は、平安時代の文芸が社会的にどのような位置にあるのかを探ることを目的としている。そのために、当時の社会が天皇を頂点としているという事実に鑑み、天皇が主催する文芸生成の場(=宮廷詩宴)について、資料を収集・復元する。 本年度は、前年度から引き続き、資料収集、各宮廷詩宴の注解を行ったが、特に、1.個別宮廷詩宴の読解、2.参加者の分析に主眼を置いた。 1.個別宮廷詩宴の読解については、ほぼすべての作品が残る寛平元年九月残菊宴の読解を行った。その際、献上された漢詩(応制詩)の末尾表現に特質を見出し、その検討のために、平安前期の応製詩の末尾部分(述懐部)について、検証を行った。その成果の一部は、「応制詩の述懐一平安前期宮廷詩宴における<個>-」(二松学舎大学COE・国際シンポジウム「日本漢文の黎明と発展」・2007年9月)として、研究発表を行った。 2.については、特に漢詩作者の検証が中心となるが、本年度は、平安前期の漢詩人でもありながら、ほとんど注目されることのなかった、安倍興行について資料をまとめ、「安倍興行考」(奈良大学紀要36・2008年3月)として公表した。現在他の漢詩作者の伝記資料も収集しており、次年度も引き続き検証を行う予定である。 なお、平安時代に編纂された勅撰漢詩集、勅撰和歌集は、平安時代の文芸の社会的地位を考察する上で、宮廷詩宴とともに貴重な資料であるが、その作者層は、宮廷詩宴の作者層と重なる面がある。その点を、2の課題に付随させる形で検証を行った。
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