2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720055
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
滝川 幸司 Nara University, 文学部, 准教授 (80309525)
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Keywords | 国文学 / 天皇 / 日本史 / 宮廷詩宴 / 公的文学 |
Research Abstract |
本研究は、平安時代の文芸が社会的にどのような位置にあるのかを探ることを目的としている。そのために、当時の社会が天皇を頂点としているという事実に鑑み、天皇が主催する文芸生成の場(=宮廷詩宴)について、資料を収集・復元する。 本年度は、前年度から引き続き、1. 資料収集、各宮廷詩宴の注解を行い、2. 参加者の分析に主眼を置いた。 1. にたいては、滝川「宮廷詩宴年表」(『天皇と文壇平安前期の公的文学』和泉書院・2007)を訂正・増補すべき資料が少なからず見出された。早急の公表を目指したい。 2. については、特に宮廷詩宴において重要な役割を果たす、序者(=序文制作者)・題者(=詩題献上者)の資料考証を行った。なお、平安時代に編纂された勅撰漢詩集、勅撰和歌集は、平安時代の文芸の社会的地位を考察する上で、宮廷詩宴とともに貴重な資料であるが、その作者層は、宮廷詩宴の作者層と重なる面がある。その点を、2の課題に付随させる形で検証を行い、成果を「勅撰集における詩人・歌人の官職」(『王朝文学と官職・位階』竹林舎・2008年5月)として公表した。宮廷詩宴は、天皇を頂点とする国家が要求するシステムとして機能しており、そのため、天皇の個人的な意識によって開催が左右されることがない。それに比べ、勅撰漢詩集、勅撰和歌集において、作者層としても中心となる撰者は、天皇と個人的な結びたきによって選ばれており、官職によって選ばれる宮廷詩宴の作者とは性格が異なっている。これは、天皇における「公」と「私」の問題、また、勅撰集の社会的地位に関する問題に繋がってくる。なお、勅撰和歌集の撰者は、当初、直接的に天皇との繋がりを持たず、その点は、漢詩文と和歌の社会的地位の差が見られることになる。
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