2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720057
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Research Institution | Otsuma Women's University Junior College Division |
Principal Investigator |
城殿 智行 大妻女子大学短期大学部, 文学部, 助教授 (00341925)
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Keywords | 日本近代文学 / 映像 / 映画 / 批評 |
Research Abstract |
本研究の目的をふまえ、殊に戦後の文芸批評における映像メディアへの言及を精査し、その一部を、「<戦後>空間と<日本>文学」と題された雑誌特集に寄稿した(下記『日本文学』掲載論文)。戦後の言説状況を、現在の視点から分析し再配置する言説分析的な発想に批判的な検討を加えつつ、映像メディアと戦後的な言説生産の関係をとらえようとした論考であり、主に三島由紀夫と中上健次が問題化した言説と映像の関係性を論じた。 また、1960年代に再検討される、映像におけるリアリティという主題と、その変質をめぐって、別の角度から批評的な表現のあり方に考察を加えたのが下記『立教大学日本文学』掲載論文である。直接に言及したのはエルマンノ・オルミとアッバス・キアロスタミとケン・ローチという、それぞれ現在のイタリア・イラン・イギリスを代表する映画作家たちの共同監督作品であるが、往々にしてリアリズムという観点から評価される三者の比較検討を通じ、映像にまつわるリアリティという概念の史的変質を、日本文学と結びつけて論じた。 さらに、平成18年度昭和文学会春季大会において、「文学者の映像表現」と題された大会テーマに基づき、口頭発表を行った。「中上健次の映像表現」と題した発表は、中上という一作家の映像との関わりばかりを論じたものではなく、むしろ彼の創作過程をとりまく言説状況を分析することで、文芸と映像の関係を時代に即して把握しようとした発表である。
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