2007 Fiscal Year Annual Research Report
啓蒙期における寓話の表現-近代寓話史の構築のために
Project/Area Number |
18720060
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
木戸 雄一 National Institute of Japanese Literature, 複合領域研究系, 助教 (30390587)
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Keywords | 日本文学 / 近代文学 / 啓蒙 / 寓話 / 児童文学 |
Research Abstract |
平成19年度は、以下の作業を行った。 1.「絵入自由新聞」の啓蒙的言説・文芸の出版広告の収集と整理。 2.国会・会議・議論に関する啓蒙文献の収集と整理。 3.国会未来記系統の政治小説を中心にした小説の収集と調査。 4.啓蒙的言説としての少年向け小説の調査。 今年度も前年度に引き続き、国会開設に向けて、議論と意志決定という新しいコミュニケーション形式を、どのような先行寓話の形式を借用しつつ、啓蒙していったのかを調査した。また、その文献として、前年度の「郵便報知新聞」に続き、「絵入自由新聞」所載の記事や出版広告を重点的に調査した。改進党系の言説と比べ、実録や合巻など、江戸期の通俗小説の形式を積極的に採用し、新聞の「つづき物」として連載していく過程がわかった。さらに演劇化や紙面を大胆に使ったビジュアルな表現など、文学以外のメディアとも頻繁にコラボレーションすることで、多角的に読者に働きかける様態が把握できた。 さらに、明治末年から外国文学の翻案として登場した「少年探偵小説」を分析し、翻案のいくつかの段階で啓蒙のための情報の取捨と整理が行われ、それぞれ想定する読者に合わせてテクストが変質させられていることを分析した。その際に、18年度に行ったお伽噺化された近代小説の調査の結果が有用であった。また、読者が必ずしもその啓蒙の意図に沿った反応を示していない点についても言及し、考察した。成果は「「少年探偵小説」の条件-三津木春影『探偵奇譚呉田博士』の場合-」(『児童文学翻訳大事典第四巻』、大空社、6月)として発表した。
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