2008 Fiscal Year Annual Research Report
啓蒙期における寓話の表現-近代寓話史の構築のために
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18720060
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
木戸 雄一 National Institute of Japanese Literature, 複合領域研究系, 助教 (30390587)
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Keywords | 国文学 / 比較文学 / 文学一般 / 文学論 / 芸術諸学 |
Research Abstract |
平成20年度は最終年度として、以下の作業を行った。1. 「絵入自由新聞」の啓蒙的言説・文芸の出版広告の収集と整理。2. 国会・会議・議論に関する啓蒙文献の収集と調査。3. 国会未来記系統の政治小説を中心にした小説の収集と調査。 前年度に引き続き、国会開設前の啓蒙的文献の中から寓話的表現を調査した。それらを国会開設前の国会に関する寓話としての「国会未来記」、近世文学の形式を借りながら、国会を間接的に寓話化した作品群に分類し、それぞれに検討した。その結果、「国会未来記」には啓蒙書の記述に沿った議論像が描かれているが、演説の描写に比べ、議論における言葉のやりとりは生硬な表現に終わっていることが明らかになった。一方、近世文学の形式を借りた国会物は、議論のやりとりが、口承的な表現として形式化されていたジャンルに則ることで、オーラルな見かけを持った表現に達していた。また、異なる階層間の言語のやりとりなどで、文体同士が衝突するが、合意は「行司」などの役割に任されており、議論の収斂をうまくイメージできなかったことがわかった。'これらは、今後「国会物」の流通・受容といった事柄と絡めつつ、より高次の研究としてまとめたい。 また、行商などで流通した国会物のテキストの収集が実現し、その流れも含め、地方に流布していく国会の議論像が、それぞれのメディアでどのように描き分けられているのかについて、新たな研究の可能性が見い出された。
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