2006 Fiscal Year Annual Research Report
T.S.エリオットと帝国の理念、および東アジアにおけるその思想の散種に関する研究
Project/Area Number |
18720066
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
三原 芳秋 お茶の水女子大学, 語学センター, 講師 (10323560)
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Keywords | 英米文学 / 思想史 / 日本帝国主義 / 植民地朝鮮 |
Research Abstract |
本年度の成果は、大きく分けて(1)北米への調査旅行によって、T.S.エリオット関連のさまざまな一次資料を研究する機会を得たこと(2)帝国日本(主に内地と植民地朝鮮)における思想史関連の基礎研究を大幅に前進させたこと(3)進行中のプロジェクトに関して、専門家の集まる場で積極的に発表を行い、その場での討論を通じて多くの新たな知見を得たこと、などである。以下に、それぞれの項目を詳述する。 (1)夏期休業中に、ニューヨーク公立図書館、コーネル大学クロック図書館、ハーヴァード大学ホートン図書館への調査旅行を実施し、それぞれの図書館で、T.S.エリオットの手稿・書簡類を中心に集中的な一次資料調査を行った。それらの内容公表に関してはT.S.エリオット夫人の許可が必要なため、この場での詳述は差し控えるが、数多くの書簡や大学時代の手書きノート(当時客員教授としてハーヴァードに滞在していた姉崎正治の仏教思想講義を含む)からは少なからぬ新たな知見を得ることができた。 (2)植民地朝鮮の思想界(とくに『人文評論』誌周辺)に関する書籍、および、京都学派に関する書籍を中心に基礎研究を実施。とくに前者に関しては、東京大学大学院の留学生である李英載氏の助言・指導を得て、一般的なことから専門的なことまで、非常に多くの勉強をさせていただいた。 (3)「植民地/近代の超克研究会」(於・東京外国語大学)および「『人文評論』研究会」(於・武蔵大学)という二つの研究会の場それぞれで崔載瑞に関する研究発表をする機会を得、日本・韓国の思想史研究者・文学研究者・歴史家などの参加者との対話を通じて、このプロジェクトの専門横断的な意義を確信するに至った。これらの成果は、近々、論文の形で発表されることになるだろう。 以上のように、本科研費プロジェクトの第一年目は、ほぼ当初の目的どおりの進捗を見ることができたと言える。
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