2007 Fiscal Year Annual Research Report
地中海世界を視座に据えた近現代シチリア文学の意味の再構成
Project/Area Number |
18720078
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
菊池 正和 Kyoto University of Foreign Studies, 外国語学部, 講師 (30411002)
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Keywords | シチリア / イタリア文学 / 地中海 / 民俗学 / 大地母神 / ジュファー / 国際研究者交流 / イタリア |
Research Abstract |
採択2年目にあたる平成19年度は、前年度より研究を進めていた、シチリア島の民間伝承文学に見られる死生観・宗教観や笑いの概念を分析・整理し、学術雑誌に翻訳・研究ノートの掲載という形で発表することと、シチリア土着の大地母神信仰が、近現代シチリア文学の中の女性像に残している痕跡を、実際の作品を取り上げつつ論証することを目的としていました。これらの研究における実績としては、まずは前者については、広くアラブ世界全域に流布しているジュファーを主人公とする一連の滑稽譚の、シチリアにおける受容とその特徴を分析して下記の学術雑誌に発表しました。そこでは、愚かさと狡智という両義的な特性の間を揺れ動きながら、一貫して、その瞬問に期待されていることの逆を行うことで、明文化されてはいないが社会で暗黙のうちに受け入れられている因習を打破し、価値観を転倒させるジュファーの役割を分析したほか、シチリアだけに見られる特徴として、ジュファーを他の村や地域に対する好戦的な挑発の道具にするという党派主義やカンパニリズモとの関連を指摘しました。また後者については、シチリアの劇作家ルイジ・ピランデッロの戯曲の分析を通じて、土着的な大地母神信仰が、現代のシチリア人の存在論的な認識に与えている影響について下記の通り学会発表を行いました。発表では、地中海的な女性像の原型である大地母神に人間の再生の可能性を託すシチリア人の心性を明らかにしました。また、大学の夏期休暇の時期を利用してシチリアに渡り、現地の研究者とシチリアの習俗や文化について意見交換を行ったほか、文献の複写に努めました。
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