2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720089
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
須藤 直人 立命館大学, 文学部, 助教授 (60411138)
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Keywords | 異人種間恋愛・結婚 / 太平洋(南洋) / 植民地 / ポストコロニアル |
Research Abstract |
「南洋」の(旧)植民地に対するイメージ及びその形成のメカニズム、西洋・日本・太平洋諸島にまたがるイメージの作用のダイナミクスを、「異人種間恋愛譚」に焦点を当てて明らかにした。「異人種間恋愛譚」は植民地における植民者と先住民の関係を、暴力や搾取によるのではなく、「愛情」に基づく関係として描くことを通して、植民地支配を正当化し、現実の暴力や経済的・性的搾取を美化し、隠蔽する。欧米諸国間の植民地獲得競争が頂点に達した19世紀末には、太平洋諸島・東南アジア・日本を舞台とする「異人種間恋愛譚」が現れる。19世紀中頃に描かれたメルヴィルやバランタインの物語では「恋愛」が成り立たなかった(タブー視された)太平洋の「異人種間恋愛」だが、ロティに至って、以後ゴーギャンや、プッチーニのオペラ『蝶々夫人』、ミッチェナーや、ミュージカル・映画『南太平洋』などに影響し、20世紀の支配的言説となる植民地ロマンス「太平洋異人種間恋愛譚」が生まれる。同時に、同じ19世紀末、こうしたロマンスを問い直し、書き換えたテクストが現れる。それは、スティーヴンソン、ベッケ、コンラッドという、その「自己」(出自)が「西洋世界」の中で「周辺」とされた場所(スコットランド、オーストラリア、ポーランド)に関わる作家によって書かれている。20世紀前半には、かつてロティのテクストにおいて「異人種間恋愛譚」の舞台とされると同時に、植民地宗主国としてアジア・太平洋世界にそれを援用した日本において、その「書き換え」の試みが見られるようになる(菊地寛、芥川龍之介、中島敦)。20世紀後半にはサモア出身のウェントによって「(旧)被植民者」の立場から、北海道出身の池澤夏樹によって「ポストコロニアル」の観点から、ロティ型「異人種間恋愛譚」の「書き換え」がなされている。
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Research Products
(1 results)