2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720089
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
須藤 直人 Ritsumeikan University, 文学部, 准教授 (60411138)
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Keywords | 南洋 / 太平洋諸島 / ポストコロニアル / 脱植民地化 / 異人種間恋愛 / 混血 / 中島敦 |
Research Abstract |
太平洋諸島の文化にかかわる資料、および、太平洋諸島と日本や欧米世界との関係にかかわる資料の収集、ロサンゼルスの博物館での各種展示会において、太平洋諸島の文化とアジア・欧米世界との多様なかかわりをテーマとする資料の収集を行い、その成果を学術論文1本、学会発表1本にまとめた。 当時日本の統治下に置かれた南洋群島ミクロネシアを訪れた作家・中島敦の作品について、これまでにない読みを試みた。古代中国を舞台とする作品などが中島の代表作とされるが、それらの作品はすべて「異人種間の恋愛・結婚」「混血児の誕生」を寓話化したものであり、日本の植民地における人種・性・階級の問題、文明と未開の問題、戦争の問題を描いたものとして読み解くことができる。中島は南洋の文化を作品に取り入れることにより、それまでの欧米人作家や日本人作家とは異なる南洋のイメージを描き出しており、これは従来指摘されてこなかったことである。 また中島の試みは、現在の南太平洋における、帝国が生み出した太平洋世界のイメージ(「南洋」、「南太平洋」、「アジア太平洋」、「環太平洋」など)とは似て非なる、「島の海」「新オセアニア」の共同性の構築を目指す現地作家たちによる言論活動に先んじた、それらと共鳴する試みと見做すことができることを示した。 さらに、こうした現地のポストコロニアル作家たちが提示する「新オセアニア世界」において、日本文化が重要な役割を果たしていることを明らかにした。日本文化と太平洋諸島の文化との間のこうした相関関係や、太平洋諸島から見る日本文化のイメージを示すことは、日本研究に新しい視点を与える点で意義があり、重要である。
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Research Products
(2 results)