2008 Fiscal Year Annual Research Report
1949年以前の中国映画界における外国映画の受容とその影響に関する研究
Project/Area Number |
18720090
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
菅原 慶乃 Kansai University, 文学部, 准教授 (30411490)
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Keywords | 中国映画 / 映画産業 / 検閲 |
Research Abstract |
資料調査としては、昨年度に引き続きアメリカ・国立公文書記録管理局および議会図書館にて関連資料の閲覧、調査を行った。国立公文書記録管理局では、商務省の貿易関連部局や中国各地のアメリカ領事館の諸文書を重点的に調査した。とりわけ前者においては、貿易関連部局の下に映画専門の部局が立ち上げられ、各国の映画関連事業と一定の関わりをもっていることが判明した。さらに、商務省が中国における主要産業について不定期のレポート類を発行していたことが明らかとなった。議会図書館では、日本の図書館には所蔵されていないアメリカの映画年鑑や映画雑誌等のマイクロフィルムを閲覧した。 さらに、これまで収集してきた1920〜1930年代の各種映画年鑑・データブックを用い、上海の国産映画プロダクションの設立時期と配給・興行ネットワークとの関連を分析した。同時に、外国映画を専門に配給していたと思われる外国籍企業の資料も整理を終え、分析に着手した。 主な研究成果として、「上海共同租界工部局の初期映画検閲制度について-映画検閲委員会設立前後から『危険大歓迎』事件まで-」(『關西大學文學論集』第58巻第1号)を公表した。昨年度の学会報告の内容をさらに発展させ、工部局の初期映画体制が見直される契機となった『危険大歓迎』をめぐる洪深拘留事件の詳細を追加した。この成果により、国産映画の急増により映画の"質"が問題とされ国内で検閲を望む声が高まったこと、そして、映画の"質"とは公序良俗を保証するという意味合いの他に、外国映画の場合はとりわけ他の国の人々(この洪深事件の場合は中国人)を侮辱する内容が無いことが含まれる点が明らかとなった。
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