2007 Fiscal Year Annual Research Report
共時的・通時的分析を用いた言語衰退の研究-消滅の危機に瀕した「パラオ日本語」
Project/Area Number |
18720100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 和子 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (80350239)
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Keywords | 社会言語学 / 方言接触 / 変異理論 / 言語消滅 / 言語衰退 / 日本語 / パラオ / 言語変化 |
Research Abstract |
3カ年計画の2年目の研究として、本年度は10年前に収集した「旧データ」に基づく研究を総括しつつ、次なる「新データ」を加えた研究に向けての土台を整備した。そもそも本研究は、20世紀前半にパラオで形成された「パラオ日本語」の特徴を、方言接触の観点から掘り下げ、その後の言語消滅のプロセスを解明することを目指したものであり、本年度は方言接触に関する総括的かつ総合的な分析・研究を展開した。具体的には、(1)本年度前半は、「旧データ」の中でも、とりわけ流暢な話者(fluent speaker)の会話データを再分析し、(2)本年度後半は、20世紀前半のパラオ日本語の形成期に最も影響を及ぼしたと思われる当時の日本人移民と同郷・同世代の話者による会話データを分析し、当時、方言接触の結果としてどのようなパラオ日本語が形成されたのかに考察を加え、方言接触理論のひとつであるFounder Principleを重点的に検証した。 なお、最終年度となる来年度は、パラオ共和国にて新たなデータを収集し、共時的分析を行い、さらには「旧データ」との比較による通時的分析へと発展させ、言語衰退の過程およびその要因(言語内的・言語外的)の解明を試みる予定である。その内容を「International Journal of the Sociology of Language」において報告するとともに、これまでの調査・研究の集大成を図り、一定の方向性を示すとともに、関係専門家からの助言を得ながら、また言語衰退が見られる他地域・他言語との比較を行いながら、次なる研究に向けての土台を整備する予定である。
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