2006 Fiscal Year Annual Research Report
シベリア・ユピック語の文字・音声資料の電子コーパス化とその利用に基づく記述研究
Project/Area Number |
18720104
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永井 佳代 京都大学, 文学研究科, 研究員 (00422907)
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Keywords | シベリア・ユピック語 / 音声資料 / 文字資料 / 電子コーパス / 記述言語学 |
Research Abstract |
シベリア・ユピック語の電子コーパス化を目指し,すでに出版されている文字資料の大部分をテキストファイル化した.今後,コーパスとして使用できるように形態素分析をおこないつつテキスト処理をおこなう段階にある. 7月から8月にかけておこなった現地調査では,1980年代後半から1990年代初頭に録画されたシベリア・ユピック語の映像資料を新たに2点入手することができた.今後この資料についてもこれまでの音声資料とともに書き起こし作業をおこなっていく. テキストファイル化した文字資料はコーパスとしては公開段階にはないが,これを使って従属節にかかわる二つの文法現象について研究をすすめている. 一つ目として,シベリア・ユピック語の従属節にあらわれる自動詞と他動詞の談話的な使用ついて研究を進めている.ある種の従属節では,継起的な動作を表す場合には主語が主節の主語と同一である必要があるが,同時的な動作を表す場合には主語の異同は問われない.継起的な動作は自動詞と他動詞どちらもあらわれうるが,同時的な動作は他動詞の自動詞化を必要とする.この使い分けが他動性の違いによる談話における前景・後景に対応していることがテキスト資料を用いて研究を進めたことで明らかとなった. 二つ目として,先に述べた従属節における他動詞の自動詞化において受動構文がみられることについて研究を進めている.シベリア・ユピック語は他のエスキモー諸語同様,能格型の格標示をもつ言語で,逆受動についての記述は多く見られたが,受動について,その用法が明らかにされたことはなかった. 現在,この二つのテーマについて投稿論文を執筆中である.
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Research Products
(2 results)