2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720107
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
伊藤 さとみ 琉球大学, 法文学部, 助教授 (60347127)
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Keywords | 意味論 / 類型論 / 形容詞 / オーストロネシア語族 / 中国語 / 英語 / 比較級 |
Research Abstract |
中国語の形容詞は、無標の形式が比較級を、有標の形式が絶対級を表す。例を挙げると、「〓三比李四高/張三 より 李四 高い(張三は李四より背が高い)」の「高」に対して、「〓三很高/張三 hen 高い(張三は背が高い)」の「很高」が対応している。これは、無標の形式が絶対級を表し、-erの形式が比較級を表す英語とは対照をなす。比較級-無標形式の中国語タイプのシステムにおいては、形容詞とは、常に比較の対象を含意し、それが与える基準を超えているかどうかを述べるものだと捉えられている。一方、絶対級-無標形式の英語タイプのシステムでは、形容詞は、その叙述の対象となる個体の属性を述べるものと捉えられている。この2つのうち、どちらがより基本的なシステムなのか、または、この両方のシステムが同じ一つのシステムから派生されるのかを明らかにする必要がある。 本年度は、中国語タイプの形容詞システムと、英語タイプの形容詞システムのどちらが通言語的に優勢であるのかを、主にオーストロネシア語族言語について調査した。その結果、英語タイプのシステムの方が優位であることが分かったが、いくつかの点でさらに分析を再考する必要が出てきた。一つは、比較構文という一定の型を持たない言語の存在である。Korowai、Nabakなどの言語では、比較の意味を表すために、形容詞の肯定形と否定形を使う。こういった場合を意味論的にどう扱うべきか次年度に考慮したい。二つ目に、比較構文を作る際に、形容詞の後に移動を表す動詞を用いるもの(例:Sye, Seediqなど)も目立った。この傾向は、形容詞をスケールと捉える見方を支持すると思われる。
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