2006 Fiscal Year Annual Research Report
詞章流動期狂言資料による複合辞形式の研究-近代語の分析的傾向の解析-
Project/Area Number |
18720121
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松尾 弘徳 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 助手 (40423579)
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Keywords | 狂言資料 / 複合辞形式 / 当為表現 / 近代語 / 分析的傾向 |
Research Abstract |
「複合辞形式による分析的傾向」は古代語から近代語へ至る流れの中での大きな変化である。現代語の「することができる」「ないつもりだ」など複合辞による表現形式は、いくつかの自立語がひとまとまりとなってモダリティ形式を形成している。このような複合形式による表現形式の形成過程の考察が本研究の全体構想である。 本研究の中心課題である当為表現も、古代語の「べし」の担っていた意味範疇の一部が切り取られ、現代では「なければならない」などの形で表されるようになったものと考えられる。本研究の目的は、如上の複合辞形式が形成されて行くという近代語化への過程を中世期の資料を用いて探ることである。室町末〜江戸初期の台本の詞章は、即興劇として成立した狂言が台本の形で書き留められたごく初期であり、詞章としては流動的で当代の口語をよく反映しているものと考えられる。特に狂言資料に着目する所以である。 このような見地に立ち、本年度は主に連体修飾節内部における当為表現の振る舞いを調査した。その結果、連体節内部において、当為表現は「客観的規制」と呼べそうな用法として専ら使用されていることが明らかとなった。この成果は、来年度中に学会誌に公表予定である。現在は、古狂言台本においても同様の傾向が見られるのかという点に関して調査中である。
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