2008 Fiscal Year Annual Research Report
詞章流動期狂言資料による複合辞形式の研究-近代語の分析的傾向の解析-
Project/Area Number |
18720121
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松尾 弘徳 Kyushu University, 人文科学研究院, 専門研究員 (40423579)
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Keywords | 福岡市方言のゲナ / とりたて詞 / 狂言資料 / 複合辞形式 / 近代語 / 文法化 |
Research Abstract |
今年度は福岡市方言の「ゲナ」という形式に着目し、「伝聞の助動詞からとりたて詞的用法へ」という文法化現象が当該方言において生じていることを指摘した。この成果は現在印刷中の『語文研究』誌(九州大学国語国文学会発行)に学術論文として公表予定である。 この研究ではまずアンケート調査を行い、ゲナのとりたて詞用法の使用状況を調査した。ここでわかったことは、主に福岡県筑前西北域の若年層において、その使用が顕著であるということである。特に福岡市方言若年層話者の一部は、ゲナを伝聞用法では用いず、もっぱらとりたて詞として用いており、方言文法研究において興味深い事例であると考えられる。 また、ゲナの取り立て詞用法成立のプロセスに関しても検討を加えた。その中で述べた変化モデルは、先行研究では様態用法から派生したとされていた取り立て用法が、引用マーカー的用法を仲立ちとして、伝聞用法から派生したというものである。九州方言、就中福岡県方言のゲナの使用状況、および各用法間の類似性からしてもこのように考えた方が妥当であるように思う。 以上の研究と並行して、これまで私が主に研究テーマとして取り組んできた、狂言資料を用いた近代語文法の史的研究も行っている。現代語の「することができる」「ないつもりだ」など複合辞による表現形式は、いくつかの自立語がひとまとまりとなってモダリティ形式を形成している。このような複合形式による表現形式の形成過程の考察を近世期に筆録された狂言資料を用いて研究中である。
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