2006 Fiscal Year Annual Research Report
狂言資料を中心に近代語の萌芽や体系化成立を追究する研究
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18720125
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Research Institution | Junshin Junior College |
Principal Investigator |
荻野 千砂子 純真女子短期大学, 国文科, 講師 (40331897)
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Keywords | 授受動詞 / モダリティ / 補助動詞 / テ形 / 視点 / ヤル・クレル・モラウ / 文法化 / 狂言資料 |
Research Abstract |
今年度は、近代語授受動詞の体系化成立に関して研究調査を行った。前年度からの研究の成果として、本動詞クダサルが現代語に見られる「話し手の視点」を獲得した契機はテ形+補助動詞にある可能性について述べた(共著発表・5月)。テクダサルが、依頼表現「私に~シテクダサイ」形式で多用されたため、与格に一人称を取りやすくなり、この人称制約が本動詞に影響を及ぼして「話し手の視点」を作ったのではないかという論を展開した。このように補助動詞に独自の役割があるという考えは、通常の文法化とは異なる考えである。ただし、クダサルとクレルとの関係や、非敬語形のヤルやモラウとの関係など、研究すべき課題は残ったままであった。そこで、今年度は非敬語形の三語がどのように授受動詞体系を形成したかについての研究を行うことにした。 古代語には近代語のような授受動詞体系は存在しない。本動詞ヤル・クレル・モラウは個々の意味を持つお互い独立した動詞で、近代語にある「話し手の視点」がない。この特徴はどのようにして生じたかについて追究した。結果、テクレルは、テクダサルと同じように依頼表現に偏っていることが分かった。テクダサルと同様にテクレ形式の多用から人称制約が生まれ、本動詞クレルに「話し手の視点」が生じた可能性がある。ヤル、モラウでも同様に補助動詞テ形の影響があることを示唆し、補助動詞という機能語が独自に持つ役割について考察中である。以上の研究に関して、平成18年8月11日第209回筑紫国語学談話会にて「「てくれる」の萌芽と本動詞「くれる」との関係」(大分県九州国立大学九重共同研修所)と題し発表を行った。また、平成18年11月10日に第239回近代語研究会発表大会(岡山大学)にて「狂言資料を中心にみた授受動詞クレル・ヤル・モラウの成立」(全国大会)と題し口頭発表を行った。
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Research Products
(2 results)