2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720126
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Research Institution | The Institute of Behavioral Sciences |
Principal Investigator |
丸元 聡子 (財)計量計画研究所, 言語情報研究室, 研究員 (30419080)
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Keywords | 日本語学 / 言語生活 / 配慮表現 / 行政コミュニケーション |
Research Abstract |
文化庁の意識調査などによると、多くの人々は相手に配慮した言動をとれるようになることを望んでおり、その知識を身に付けたいと考えている。しかし、現在のところ、配慮すべき状況や人間関係、その際の言葉遣いなどについて、具体的な指針になるような提案はなされていない。そこで、我々は、配慮の言語行動の具体的な運用方法の提案を目指して、近年、注目されている「行政と市民とのコミュニケーション」に着目し、配慮の言語行動に関する分析を行った。具体的には、市民が「配慮に欠けている」と感じる行政の言語行動に着目し、その具体的な事例を収集、分析することにより、どのような言語行動を、なぜそう感じたのかを検討した。 本年度は全国の20代〜70代の男女から1,183事例を収集し、この一部に対して、具体的な記述内容を検討した。この結果、特徴的な傾向として、行政担当者の発話の態度・口調に関わる言及が多く見られた。態度・口調に関わる否定的な言及があるかを軸に事例を分類したところ、7割強の事例に態度・口調に関わる何らかの言及があった。行政コミュニケーションにおいては、「態度が悪い」という評価が「配慮に欠ける」という感覚を呼び起こしている可能性が高い。 そこで「態度が悪い」とは、どのような要因から成り立っているかを事例に基づき整理したところ、バーバル・コミュニケーションの要因に比べて、ノンバーバル・コミュニケーションの要因の方が出現数が多く、また、要因の種類が多いことが分かった。行政コミュニケーションにおいては、発話内容自体の要因や、表現選択上の要因もあるものの、態度に関わるノンバーバル・コミュニケーションの要因が、市民に配慮に欠けるという感覚を強く与えていると言え、この改善が求められる。特に、話を聞かない、顔を見ない、無表情、無言は、事例数が多かった。市民は、真摯に向き合い、話を聞く姿勢を求めている傾向があると言える。 今後は、検討データを増やし、実験を行って、行政対話のモデルを構築する予定である。
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