2006 Fiscal Year Annual Research Report
関連性理論に基づいた語彙概念の語用論的解釈に関する日英語対照研究
Project/Area Number |
18720129
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
井門 亮 群馬大学, 社会情報学部, 助教授 (90334086)
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Keywords | 関連性理論 / アドホック概念 / 接尾辞 |
Research Abstract |
今年度は、記号化された語彙概念を、語用論的に調整して解釈するように聞き手に指示を伝え、処理労力を軽減させる役割を果たす接尾辞について、日英語の2言語間で対照研究を行い、記号化された語彙概念がアドホック概念として解釈される認知的過程の解明を試みた。具体的には、日英語の接尾辞-ishと「っぽい」を中心に、関連性理論におけるアドホック概念形成の観点から、これらの接尾辞が付くことによって、基体(base)が記号化する語彙概念の解釈に、どのような認知的影響を与えるのか考察した。 結論として、英語接尾辞-ishは、記号化された概念を緩めたり、狭めたりしてアドホック概念として解釈せよとの指示(手続き的意味)を与えていると考えられる。-ishに対応する日本語接尾辞「っぽい」も、一部の名詞などに付く場合は、-ishと同様の役割を果たしているが、アドホック概念に基づいた説明だけでは捉えきれない用法もあり、その機能は-ishと完全には一致しないようである。 また、-ishや「っぽい」は非常に生産性が高く、その場その場で基体と結合することによって、新奇な例を生み出すことが可能であり、そういづた例に対しては、本研究で提案した分析方法により説明が可能であるが、一般的な名詞や形容詞に付き、-ishや「っぽい」も含めた単語全体がすでに語彙として定着している例については、その手続き的意味としての機能が失われてしまっているようにも感じられる。こういった例に関しては、今後更に検討が必要であろう。
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