2008 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害者を対象とした日本語能力テストの開発のための基礎的研究
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18720134
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 香織 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 研究員 (40400618)
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Keywords | 聴覚障害者 / 日本語能力 |
Research Abstract |
本研究は、日本語能力に問題を抱えている聴覚障害者が、自分自身の日本語能力を客観的に把握し、学習に活かすことができるような日本語能力テスト開発のための基礎となる研究である。平成20年度の研究目的は次の2点である。 (1) 聴覚障害者の日本語運用において特に問題のある文法項目についてのこれまでの調査結果をまとめる。 (2) 聴覚障害者の職場での言語使用場面などを考慮し、テストの場面設定をいくつか考案する。 (1) に関しては、テスト作成時の予測に反して高い正答率が得られた問題もあった一方で、極端に正答率が低い問題も見られた。このような極端に正答率が低い文法項目に関しては、より詳細な検討の必要性が示唆された。特に、複文理解の問題に起因する誤用が目立ったことは注目に値する。具体的には、従属節を作ること自体が不得意であることに加え、間接疑問文に関わる誤用、「〜(する)と」等の接続助詞を使うべきときに正しく使用できないこと、「の」「こと」の適切な使い分けに関する誤用などが多く見られた。また、ある程度まとまった長さの文章を書かせた場合には、主述が一致せずねじれ・不整合を起こしてしまう例や、並列に並びえない要素を並列してしまう誤用が多く見られた。 (2) に関しては、企業では電話対応等を除くと、業務遂行に当たっては健聴者と全く同じ働きを求めており、日々多くのビジネス文書を理解し、処理する力と、同僚と支障なくコミュニケーションする力が必要であることが明らかになったため、特に社内でのEメール使用等に関わる場面設定が必要不可欠であることがわかった。
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