2007 Fiscal Year Annual Research Report
テクストにおける「論証の仕方」と日本語学習者の文章理解・作成の相関の解明
Project/Area Number |
18720139
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
甲田 直美 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 准教授 (40303763)
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Keywords | 日本語教育 / テクスト / 文章理解 / 論理 / 文化 / 学習スタイル / 思考スタイル / 段落構造 |
Research Abstract |
平成19年度は、昨年度に引き続き、異なる言語間における論理構造と理解の相関についてデータを採取した。日本語、中国語、アラビア語の調査について全国学会、国際シンポジウムで研究発表を行った。異なる言語間において、どのような論理構造が好まれ、効果的コミュニケーションに繋がっているのかを、人々が持つ先行信念や論争的な問題に対する態度、事後の信念の評価の値を用いて実証的に研究を進めた。特定の論証パターンへの嗜好には文化差が指摘されている(Nisbett, 2003をはじめとする文化社会心理学研究)が,多くの研究では文化差を東洋対西洋の二極対立図式として捉えており,アジア地域を一様に捉えている。しかし,甲田(2003)では,アジア圏からの留学生を対象に日本語の説明文の読解過程を調べたところ,議論の構造のとらえ方は同じアジア圏でも異なっていた。多言語間における論証パターンと信念の変化との相関,理解スタイルの特徴を知るための一環として,中国語母語話者のデータを採取した。データの結果としては、参加者の特性と信念の変更の相関を調べたところ,日本人で有意だった両存特性(判断を下す際に,意見が,たとえ排反するような場合でも複数存在することを容認する特性)と文章読解前後の信念差との間に相関関係はみられなかった。日本語の母語話者特有の読解の特徴として両存特性が指摘できた。多言語間における、認識論的な信念と論理的思考、言語理解の動的プロセスを求める文化横断的研究として成果を公表した。単に言語と言語を比較するだけではなく、各個人の理解・学習スタイルのデータも採取し、どのような思考スタイルが文章理解と関わっているか分析した。
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