2006 Fiscal Year Annual Research Report
欽定憲法史観の定着と政党政治擁護論の展開に関する研究
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18720162
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川口 暁弘 北海道大学, 大学院文学研究科, 助教授 (80327311)
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Keywords | 明治憲法 / 政党政治 / 欽定憲法史観 |
Research Abstract |
本研究は、欽定憲法史観の定着と流布に、政党政治家による政党政治擁護論が深く関係していたことを論証することを目的とする。 現時点での仮説を述べれば、政党政治家は政府がつくった欽定憲法史観を横領して、政党政治の必然性を正当化する論理にすり替えたのである。憲法は公議輿論をうたった五箇条の御誓文の趣旨を実現するために天皇が欽定したものであり、公議輿論を発展させるとは議会政治・政党政治を発展させることに他ならない、故に政党政治は天皇の意思にかなう政治体制でありその発展に尽くすことは臣民の義務である、というものである。すなわち、政党政治家は自己を正当化するために欽定憲法史観の定着に加担してきたわけである。かかる意想はいつ頃から政党政治家の常套する論法となったか、定着に到る思想の紆余曲折はいかにあったか。 本年度は鉄道国有化法案審議過程、および、第一次憲政擁護運動における政党政治家の憲法言説を調査した。 第一次憲政擁護運動は、政党政治家が護憲勢力として振る舞うこととなった象徴的事例である。先行研究では西欧の立憲主義を移植する運動として位置づけられているが、犬養毅と尾崎行雄は、明治天皇の御霊を祀って運動の成功を報告している。ここでは五ヶ条の御誓文と憲法発布勅語が朗読されたのである。ここに欽定憲法史観と政党政治の蜜月関係が始まると見当をつけているのだが、今後も継続して検討する。
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