2008 Fiscal Year Annual Research Report
近世前期・東国における土地制度と村落の地域比較史的研究
Project/Area Number |
18720163
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
牧原 成征 Utsunomiya University, 教育学部, 准教授 (20375520)
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Keywords | 年貢 / 土地制度 / 社会構造 |
Research Abstract |
第一に、本年度も飯田市歴史研究所において、同所に所蔵されている虎岩郷(飯田市下久堅)の平沢文書(原文書)を閲覧し、その一部(数十点)を写真撮影・紙焼した。それらを分析して、慶長期〜寛永期(1600〜1630年頃)の年貢収取のあり方、未進処理の方法、肝煎家の土地所有と経営、百姓(年貢請負人)の存在形態等を詳細に検討した。その結果、先行研究は、時期ごとの領主による年貢収取法の変化を看過・軽視するなど、多くの遺漏があることが判明し、全面的に再構成する必要があることがわかった。ただし、史料の多くが帳簿であり、分析にかなりの時間を必要とするため、寛永期以降の検討は今後の作業課題とし、それを待って、数年以内にこれまでの研究成果をまとめ、数本の論文の形で公表したい。平沢文書は東国における近世初期の地方文書の白眉であり、本研究は研究史にとって有意義な貢献になりうる。 第二に、伊那郡の他の郷村の土地制度について検討するために、同じく飯田市歴史研究所架蔵の写真帳や長野県立歴史館架蔵の写真帳を調査・閲覧し、その一部を複写・筆写によって収集した。これらについても虎岩郷と並行して検討を進めた。 第三に、近世史家・山口啓二氏の業績をふりかえる学会誌の特集に「織豊期の社会変動」という論考を執筆し、地域ごとの土地制度・社会構造の多様性をふまえながら中世末〜近世初期の社会変動を描くことの重要性を指摘した。 第四に、昨年度、学会で口頭報告した内容をもとに「北関東の長吏小頭と職場・由緒」という論文を発表した。
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