2008 Fiscal Year Annual Research Report
中世禅宗寺院の経済組織に関する研究―禅籍史料の活用を通して―
Project/Area Number |
18720165
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川本 慎自 The University of Tokyo, 史料編纂所, 助教 (30323661)
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Keywords | 日本中世史 / 禅宗史 / 史料学 / 東班僧 / 足利学校 |
Research Abstract |
本研究は、中世禅宗寺院の経済組織について、その組織構成や寺院経済活動への関与を明らかにし、中世社会に大きな影響を与えた禅宗寺院の社会的役割について考察するものである。その方法としては、従来用いられてきた文書史料のみならず禅宗寺院に関する典籍類(禅籍)をも分析し活用することによって文書史料を補い、禅宗寺院経済の全体像に迫ろうとするものである。 最終年度にあたる本年度は、兵庫県・岡山県・広島県および関東地方を中心とした禅宗寺院等において禅籍を中心とする所蔵史料調査を行った。なお、平成20年度の後半になって、さらに新たな調査が可能であることが判明したため、所定の繰越手続きを行い平成21年度にも一部の調査を行った。 また、これらの調査を踏まえて、寺院経済活動に関する研究を行った。具体的には、足利学校遺蹟図書館所蔵の古写本『周易』の表紙裏貼に永享9年の三島暦版暦が用いられていることに着目し、その版暦がどのようにして伊豆三島から下野足利までもたらされたのかを考察することによって、伊豆から鎌倉・常陸を経て足利に至る関東一円の禅宗寺院のネットワークの存在を明らかにした。 これらの調査および研究によって、中世における禅宗寺院経済の広がりの一端を明らかにするとともに、禅籍類を歴史学の史料として用いることについても一定の見通しを立てることができたものと考える。
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