2006 Fiscal Year Annual Research Report
GISを活用した院政期貴族社会の研究:古記録の空間情報に見る貴族の行動様式の分析
Project/Area Number |
18720177
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐古 愛己 立命館大学, COE推進機構, 研究員 (70425023)
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Keywords | 日本史 / 平安貴族 / 古記録 / 京都 / GIS |
Research Abstract |
本研究の目的は、古記録にみえる貴族の行動様式(移動経路や目的)を抽出し、GISを活用してパターン化することにより、階層別の行動様式や行動を規制する諸要素を明らかにし、貴族社会の秩序・構造について考察する点にある。 本年度は『兵範記』を素材として、貴族の移動記録を集積、データベース化した。また、次年度以降、移動経路を視覚化するために基盤となる歴史地図を作成するが、その基礎となる院政期京都の地理情報データベースを構築した。具体的な研究・作業内容は以下の通りである。 (1)『兵範記』を素材として、貴族の移動記事を抜き出し、(1)年月日、(2)天候、(3)時刻、(4)移動理由(行事名等)、(5)移動主体、(6)移動主体の属性(性別・年齢・家格・官位等)、(7)出発点、(8)目的地、(9)移動に利用した経路、(10)備考などの項目を立てて、情報を整理した。 (2)上記の内容をパソコン入力し、データベース化している。今後、移動に利用した経路の視覚化を目指すため、移動経路の細分表示など、今年度集積したデータのさらなる整理・分析が必要と考えている。また、他の記録についても情報収集を行い、データの充実をはかるとともに、記録ごとの情報量や質の相違についても検討したい。 (3)移動経路を表示する院政期京都の歴史地図作成の基盤となるデータを、当該期京都に関する先行研究(『平安京提要』、『日本歴史地名大系 京都市の地名』等)や該期古記録(『中右記』・『玉葉』等)の情報をもとに収集し、データベースを構築した。今後、地図化するとともに、移動経路を表示する方途を模索し、経路の視覚化を進める予定である。 (4)平安貴族社会における古記録や貴族の行動に関する研究の一環として、日本文化を研究する外国人研究者が主宰する研究会において、「平安貴族の文化と行動」(日本文化研究会、2007年1月)というテーマで報告を行い、平安貴族の「日記」と海外の「日記」(特に中世ヨーロッパや中国における「日記」や文学)との相違など、比較史的な観点から様々なご教示を得た。
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