2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720178
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
引野 亨輔 福山大学, 人間文化学部, 講師 (90389065)
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Keywords | 日本文化史 / 藩世界 / 藩主信仰 / 民衆意識 / 僧侶と神職 |
Research Abstract |
本研究が掲げる最大の課題は、江戸時代の藩領域における「藩主信仰」の実態解明である。すなわち、武士・百姓・町人などの諸階層が、歴代藩主の存在を人神として崇める傾向に注目している訳だが、その課題に応えるために、本年度は天理大学附属天理図書館で数回史料調査を実行し、吉田文庫「御広間雑記」を閲覧した。「御広間雑記」は江戸時代に全国神職集団のとりまとめ役であった京都吉田家の玄関日誌であり、この調査によって全国の藩主達が神号を授与され、神社に祀られる具体相が明らかになった。また、広島藩の浅野氏や福山藩の水野・浅野両氏に関しては、藩政史料も駆使しつつ、藩祖が神格化されていく過程を追った。 こうした研究の成果として、2006年度歴史学研究会大会において「近世後期の地域社会における藩主信仰と民衆意識」という報告を行い、「藩主信仰」が江戸時代に有した意義を再考した。従来、民衆が藩主を神様のように崇拝する「藩主信仰」は、素朴な権力崇拝というイメージで語られることが多かった。しかし、本報告では、史料収集の成果に基づき、民衆が藩主を崇める行為の中に彼らの主体的な自己主張が込められている事実を指摘した。
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Research Products
(1 results)