2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720187
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
岩本 篤志 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 助教 (80324002)
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Keywords | 東洋史 / 中国医学史 |
Research Abstract |
本年度はこれまでの調査をふまえ、総括をおこなった。 論文「唐『新修本草』編纂と「土貢」-中国国家図書館蔵断片考」は、敦煌本『新修本草』と天聖医疾令によって、唐代前半期の医事政策の理念とその実態を究明したものである。これまでもいわれていたように『新修本草』は薬材を適切に扱うことを目的としたものであったが、唐朝においては採薬マニュアルとしての側面も重視されており、貢納物が適正かどうか確認するという、国家財政を支える役割を担っていたことがわかった。また、北朝から唐初にかけて政権が積極的に医薬制度を整備した理由のひとつには「医療之法」に「礼楽・郊廟・社稷之事」的な側面が見いだされていたこと、すなわち人民の生命を救う行為が皇帝がなすべき勤めであるという権力の演出理念にもとづいて推進されたことをあきらかにした。 また、本年度中に本論文を中核的な論文として、学位請求論文「唐代の医薬書と敦煌文献」(早稲田大学、2009年2月受理。2009年4月現在、審査中)を提出した。そのなかに昨年度の本補助金によって口頭発表の成果にいたった「貝葉形「本草」考-敦煌文献からみた本草書と社会」(内陸アジア出土古文献研究会)を収録した。 本研究の目的は東アジア諸国の制度に多大な影響をあたえた隋唐期の医事制度の理念をさぐることにあった。「唐『新修本草』編纂と「土貢」」の公開とそれを包括するかたちで結実した「唐代の医薬書と敦煌文献」の提出により、その解明にむけて大きく前進できたものと考える。今後「唐代の医薬書と敦煌文献」を広く公開することにつなげていくこととしたい。
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Research Products
(2 results)