2008 Fiscal Year Annual Research Report
一九世紀中国の社会変動に対する清朝の政策と旗人官僚-ある旗人高官の家族を例に-
Project/Area Number |
18720188
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古市 大輔 Kanazawa University, 歴史言語文化学系, 准教授 (40293328)
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Keywords | 東洋史 / 清朝 / 旗人官僚 / 社会変動 / 19世紀 |
Research Abstract |
本研究の最終年度となる本年度は、清代後半以降の華北地域における社会経済の変容過程を論じた英文著書に対する書評を公表したほか、麟慶・崇実・崇厚を官僚として輩出した満洲旗の名家である完顔氏一族を例に、19世紀後半の中国辺境地域における清朝の諸政策やその政策を実施した旗人官僚の活動、さらには、当該時期の中国社会の変容過程に対応する旗人官僚の役割などについての考察を試みた。 (1) 麟慶・崇実・崇厚の活動を中心に、中国辺境地域における清朝の諸政策とその政策を実施した旗人官僚の活動・役割に関する史料部分の抽出・整理を進めた。また、この作業に並行して、完顔氏一族(特に麟慶・崇実・崇厚)による著作や当該一族に関する記載を有する文献を整理し、その一覧を作成した。 (2) 抽出・整理した関連史料の分析を進め、中国各地、特に崇実が地方官僚として活動した咸豊・同治年間の四川省における秩序維持策やその他の清朝による行政処理、並びにその行政処理における崇実の旗人官僚としての役割について若干の検討をおこなった。まだ公刊するまでには至っていないが、この検討を通じ、内蒙古やチベットなどの非漢族居住地域における各種儀礼への派遣や、陜西・四川両省における官僚不正事件の処理のための特使としての派遣といった崇実の異動人事においては、満洲旗人としての崇実個人乃至は完顔氏一族と咸豊帝との繋がりが少なからず影響を及ぼしていたこと、また、崇実が四川省で行なった数々の行政処理においては、漢人官僚が担当していた地方行政の監視や、八旗軍の指揮を通じた四川省での軍事的混乱状況の回復と地域秩序の形成、さらに、成都駐防八旗軍の立て直しといった旗人官僚が専ら担うべき役割のあったことなどを窺うことができた。これに加え、上記の検討を踏まえつつ、19世紀後半の中国辺境地域での政治・社会変容に対応した旗人官僚の役割についても若干の仮説的考察を試みた。
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Research Products
(1 results)