2007 Fiscal Year Annual Research Report
清末民国期、江南デルタ農村の地域統合と民間信仰に関する基礎的研究
Project/Area Number |
18720189
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
佐藤 仁史 Shiga University, 教育学部, 准教授 (60335156)
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Keywords | 民国期 / 中国近現代史 / 江南 / 民間信仰 / 社 / 土地改革 / 地方文献 / 口述調査 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、民国期江南地方における「社」という自然村レベルの担い手と統合の構造を解明するための具体的かつ詳細な事例を蓄積することにある。特に村廟を中心とする民間信仰とその担い手である富農層の動向に着目し、「社」社会の統合を文化的社会的側面から照射する具体的な切り口として地方文献調査と口述調査を実施した。本年度は2007年8月下旬から9月上旬にかけて、(1)江蘇省呉江市や上海市青浦区の地方紙をはじめとする地方文献の収集や呉江市における種々の「地方文書」の発掘、(2)昨年度実施した呉江市汾湖鎮の仁老幹部や老農民に対する口述調査の2点を中心に研究を展開した。 (1)平成18年度に収集した『呉江』『青浦民衆』『青浦新報』『明報』の未入手分の補充調査を実施し、土神信仰や基層行政に関する記事の一部の読解を進めた。また、口述調査の主要地点である呉江市汾湖鎮農村部において『蘇南区呉江県土地房屋所有証』の実物一部と写し、『紅星大隊第○生産隊社員工分明細表』といった集団化時期の記録の写し、政府に陳情する際に認められた旧村幹部の履歴書、回想録、村史や家史の草稿などの「地方文書」や個人的記録を大量に収集することができた。 (2)平成18年度に調査を実施した呉江市汾湖鎮の幾つかの村落における口述調査を引き続き進めた。ヒアリングの主要内容は、解放前の廟会組織の実態、大会首の選出方法と役割、廟会組織と他村との関係、廟会組織と農村社会関係との関係などであり、廟会組織が村民に対して有する一種の「平等性」が明らかとなった。また、口述調査の進展によって、幾つかの村では上地改革から集団化にいたる時期の基層幹部が村名であったこと、(1)で言及した種々の「地方文書」や個人的記録が発見されたことから、解放直後から土地改革期における農村社会構造の変容に関して基礎的なヒアリングを実施した。
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