2006 Fiscal Year Annual Research Report
明清期における礼学と「社会における礼教の普及」に関する研究
Project/Area Number |
18720191
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
佐々木 愛 島根大学, 法文学部, 助教授 (00362905)
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Keywords | 東洋史学 / 中国哲学 |
Research Abstract |
本年度、礼学関係については、丘濬『家礼儀節』を朱熹『家礼』と比較しつつ分析を行うという内容で研究を進めた。『家礼儀節』は、特に明末以降の時期において朱熹のオリジナルなテキストよりもはるかに普及流通し、『家礼』といえば『家礼儀節』を指した程であり、明清時代の家礼実践を考察する上での最重要文献である。しかしながら従来ほとんど研究の対象にはされないまま、『家礼儀節』は単に朱熹『家礼』を簡略化した規定という位置づけが与えられるのみであった。しかし本年度の研究の結果、『家礼儀節』は、朱熹『家礼』の規定を表面的に踏襲しているスタイルはとるものの、礼の内実に関する規定は「実践しやすさ」を理由に大幅に修正されており、修正後の礼は、朱熹が本来礼に込めていた社会規範を否定していることも往々にしてあることが明らかになった。この結果は従来想定されてきた、朱熹『家礼』が明清期の社会において普及浸透していったとする単線的な思想史像とは相反するものであり、明清の社会における礼の普及を考察する上で最重要の基本的データを得ることができた。この結果の一部は近日発表予定の「明代中期における朱子学的宗法復活論の挫折と超克」と題する論文中において明らかにする予定である。 法関係については、清明集研究会の会員とともに、清明集官吏門の会読、訳注作成を進めた。12月には台湾・台北大学にて開催された「清明集与宋代社会」専題国際研究交流会に科研費旅費により参加することができた。この交流会においては「清明集與思想史研究」という内容のスピーチを行ったほか、会読において訳出に関して討論を行った。また清明集中の難解な語彙について台湾の学者と意見交換を行うことができ、不明箇所の相当数について示唆を得ることができた。
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