2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720199
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
井上 文則 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 講師 (20400608)
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Keywords | パルミラ / ローマ帝国 / 軍人皇帝時代 |
Research Abstract |
本年度は、パルミラに関する基礎的研究文献の収集ならびに、それらの精読を行いつつ、個別具体的な研究を進めた。特に本年度は、三世紀め半ばにパルミラが帝国化した時期にその都市の支配者としてあったオダエナトゥスめ経歴復元について考察を試みた。オダエナトゥスは、当該時期に、ギリシア語で、ho lamprotatos hypatikosと呼ばれる官職とmtqnn'dv mdhnh'klhと呼ばれる官職に就いていたことが知られている。しかし、これがローマ帝国のどのような官職に該当するのかが不明であり、これまで論争の対象となってきた。そこで、この問題の解決を今年度は図るべく研究を進めたのである。その結果、前者の官職は、パルミラの属したローマの属州シリア・フォエニキアの総督であること、後者は、パルミラの支配者が、ローマの称号とは関係なく、勝手に名乗った称号であることを明らかにした。そして、実際には、オダエナトゥスは、属州シリア・フォエニキア総督就任後は、まず、シリア・メソポタミア両属州駐屯軍の司令官に、続いては、小アジアからエジプトに至るローマ帝国の東万国境に配されている全軍の司令冒になっていったことを、文献史料から、明らかにした。このようにオダエナトゥスの経歴を復元することで、彼を当該期におけるローマ帝国の軍制の中に位置付けたのである。こめ研究成果は、『史林』(史学研究会)に掲載された。なお、この作業と同時に、パルミラの根本史料のひとつである『ヒストリア・アウグスタ』、とりわけこの書物に含まれる「30人僭玉伝」のパルミラの支配者の伝記の翻訳も、同時に進めた。
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