2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720203
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
桑山 由文 Kyoto Women's University, 文学部, 准教授 (60343266)
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Keywords | 西洋史 / ローマ史 / 小アジア / ギリシア文化 / シリア |
Research Abstract |
本年度は、小アジアやシリア出身者がローマ帝国中枢へ進出していった過程とその実態を明らかにすることを第一の研究目的とした。そこで、後1世紀半ばから後2世紀初頭にかけてローマ帝国直接支配下へと入っていった西アジアの従属諸王国のうち、ごく初期の後72年に併合されたコンマゲネ王国を取り上げ、この王家の人々が、併合後にローマ帝国内でどのような政治的社会的位置を占めたのか検討することを通じて、元老院議員身分を中心とする帝国中央政治支配層の変容を明らかにすることを試みた。とくに、コンマゲネ最後の王アンティオコス4世の孫である一方で、ローマ元老院議員身分にまで到達もしたガイウス・ユリウス・アンティオクス・フィロパップスに焦点をあてて、研究を進めた。彼は、その大墓廟がアテネに残っていることから、従来はギリシア文人のパトロン的存在として、ギリシア本土との関係のみから論じられる傾向にあり、元老院議員身分到達の事実や他の元老院議員たちとの関係は軽視されてきたのである。しかしながら、本研究による検討の結果、フィロパップスとその一族が首都ローマにこそ活動の軸足を置いており、王国併合後も「ギリシア文化人」としてローマ中央政界と深く交わっていたことを明らかにすることができた。すなわち、フィロパップスに代表されるような、併合された西アジア諸属国王家の人々が結節点となって、政治的中心であるローマと、文化的中心であるギリシア本土とを結び合わせていったのである。
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Research Products
(1 results)