2007 Fiscal Year Annual Research Report
シャイロックの居場所-近世ヴェネツィアのゲットーとユダヤ人-
Project/Area Number |
18720205
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
藤内 哲也 Kagoshima University, 法文学部, 准教授 (60363602)
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Keywords | 西洋史 / イタリア史 / ヴェネツィア / ユダヤ人 / ゲットー / トマス・コーリャット |
Research Abstract |
本年度は、研究実施計画において設定した課題のうち、まず(3)「近世ヴェネツィアのゲットーとユダヤ人をめぐる表象とその変化」に関して、前年度に引き続き、イングランド人旅行春トマス・コーリャットの旅行記におけるゲットーとユダヤ人の記述について検討し、その内容が単なる観察記録というよりも、むしろ同時代のユダヤ人観やヴェネツィア観に影響されていることを明らかにした。その成果は、信州大学で開催されたイタリア中・近世史研究会で口頭発表した上で、論文として公表した。 また、課題(4)「ヴェネツィア支配下の本土領都市におけるゲットーとユダヤ人政策」に関して、ヴェネツィアとその支配下にあったパドヴァ、ヴィチェンツァにて現地調査を行った。その結果、ヴェネツィアとパドヴァのゲットーにおいて、都市内の立地条件等に違いが見られること、またパドヴァでは、ユダヤ人金融業者に対抗して設立された公益質屋(モンテ・ディ・ピエタ)の豪壮な建物がゲットーに近接して建てられており、その位置関係も明らかになった。この公益質屋は、ヴィチェンツァでも同様に、都市の中心部に建てられている。これらの点をふまえ、ヴェネツィアにおけるユダヤ人政策と公益質屋の戸の関係等について、文献や史料を収集し、現在考察を進めているところである。 一方、課題(1)・(2)「ゲットーの設置・拡大をめぐる政治的、経済的、社会的背景」については、前年度から続けて考察した結果、アシュケナジムの金融業者に対する抑圧とセファルディムの商人に対する優遇というというイタリア諸都市に共通のダブル・スタンダードが見出され、しかもそれがゲットーという場に集約されている点にヴェネツィアの特徴があるという見通しを得たが、成果の公表が遅れており、現在論文を執筆中である。
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