2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパにおけるユダヤ人財産の「アーリア化」・略奪・返還(1933-現在)
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18720206
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Research Institution | Gakushuin Women's College |
Principal Investigator |
武井 彩佳 Gakushuin Women's College, 国際交流学部, 専任講師 (40409579)
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Keywords | 西洋史 / ドイツ現代史 / ホロコースト / ユダヤ人 / 財産返還 / イスラエル / パレスチナ問題 / 戦後補償 |
Research Abstract |
最終年度である本年度は、研究の総括としての本の執筆をすすめ、8月末に単著『ユダヤ人財産は誰のものか-ホロコーストからパレスチナ問題へ』(白水社2008年)として出版した。 ドイツ現代史を中心とする従来のナチズム/ホロコースト研究においては、600万の人命の喪失という点に関心が向かい、ホロコーストを物的側面から分析するという視点は希薄であった。また、ホロコーストとパレスチナ問題の物的なレベルでの関連性を問う研究は、テーマの政治性・現在的性格により、国内のみならず欧米でもほとんど不在であったといってよい。このような状況において本書は、ユダヤ人財産の略奪、その戦後の返還、現代の補償という、70年にわたる長いスパンで財産問題の展開を追い、さらにこれを他のジェノサイドや強制移住の際に発生した財産問題と比較して、これらに底通する要素を指摘した。その学術的意義は端的に、一種の学術的「タブー破り」を試みたことであり、新たな研究分野開拓の道を示唆したことにあるだろう。またこの研究は、鳥瞰的・世界史的な視野を欠くようになった細分化された歴史研究に対する問題提起を行ったと考える。ホロコーストにおいて一つの歴史が終焉したのではなく、これがいかに現在の中東問題へとつながってゆくのか、ヨーロッパと中東を結ぶ線の存在を指摘できたことの意義は大きいだろう。当初の研究目的は、おおよそ達成されたといってよい。 本書の成果を踏まえ、12月に学習院女子大学学会と、3月に西日本ドイツ現代史学会において研究の成果を報告した。このため、研究費の一部は国内旅費として支出している。
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Research Products
(4 results)