2006 Fiscal Year Annual Research Report
日韓古墳における土器使用からみた葬送行為と生産・消費システムの関連に関する研究
Project/Area Number |
18720212
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡田 裕之 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 専門研究員 (10346736)
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Keywords | 古墳 / 土器使用 / 葬送儀礼 / 生産・消費 |
Research Abstract |
本年度は、日本国内、とくに九州北部と近畿地方、および韓国、とくに慶尚北道と慶尚南道の古墳出土の土器資料について、報告書等を中心に資料収集を行い、一部の資料については実見と観察も行った。これまでの基礎的な整理・分析をとおして、以下のような知見を得ている。 まず、古墳時代中期後半の須恵器導入当初において、九州北部では、渡来系墓制とみられる石室内部に須恵器を副葬または供献する事例がみられた。これらの事例は、首長層の古墳とみられるが、後の横穴式石室における土器供献のあり方とは異なる。出土土器は須恵器を主体とし、同一石室内から出土する同一器種の場合、形態や製作技法が共通する。 また、近畿地方では、首長より下位層とみられる古墳でも、竪穴式石室内に須恵器を副葬する事例がみられ、須恵器導入期以降もみられる。そして、九州北部と同様、同一石室内の土器は、形態や製作技法が共通する。 これに対して、慶尚南道や慶尚北道では、首長層からその下位層まで、多量の陶質土器を石室内部に副葬する。出土土器は、形態や製作技法の特徴から、2〜3程度のまとまりが認められる場合がある。 このように、古墳における土器使用のあり方は、地域または古墳の階層差などによって、少しずつ異なることがわかった。しかし、日韓で器種構成が類似する点や、両地域に共通して、土器内から貝殻等を出土する事例があるように、加耶・新羅地域の葬送儀礼が、九州北部や近畿地方にも影響を与えたと考えられる。 一方、土器の表面観察からも、須恵器導入時期には、日常的に使用された土器を副葬したとするよりは、希少性が高い須恵器を副葬のために製作した可能性が高いと考えられる。韓国でも、陶質土器は基本的に古墳での使用に製作されるが、新羅の領域に早く取り込まれる地域では、新羅土器が一般集落からも多く出土するなど、次第に日常雑器化する様相もみてとれた。
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