2007 Fiscal Year Annual Research Report
日韓古墳における土器使用からみた葬送行為と生産・消費システムの関連に関する研究
Project/Area Number |
18720212
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡田 裕之 Kyushu University, 大学院・人文科学研究院, 専門研究員 (10346736)
|
Keywords | 古墳 / 土器使用 / 葬送儀礼 / 生産・消費 |
Research Abstract |
本年度は,九州と近畿を中心に,山陰,東海,関東,東北などの地域,それと韓国慶尚道や全羅道の資料について収集・整理をおこなった。土器資料を検討するにあたっては,(1)墓制における土器使用の階層構造,(2)生産・消費システムとの関連,(3)地域間比較という観点を設定しておこなった。 成果として,まず(1)の点について,古墳時代中期後半の須恵器導入期には,各地とも首長墳を中心に須恵器を副葬する状況がみられるが,従来,土器副葬の伝統がなかった列島社会では,より下位層の古墳には,須恵器の副葬がおこなわれていない。これは,(3)の点からみて,石室内への土器副葬が一般化していた韓半島とは異なり,列島では首長層にのみ導入された儀礼であり,下位層には浸透しないと考えられた。しかし,後の横穴式石室の導入に伴い,石室内における須恵器の供献がはじまると,首長層から,より下位層の古墳にまで,須恵器供献が広まる状況がみられた。これは,須恵器の形態や製作技法からも,導入当初の装飾性に富み,丁寧な技法に比べて,次第に粗雑化する状況が看取できることとも関連する。すなわち,須恵器の稀少価値が,次第に低下することを示すと考えられた。 これを,(2)または(3)の点からみると,須恵器生産開始期には,生産地が非常に限定されるが,その後,須恵器生産地が拡散することや,古墳への供献という主目的を離れ,西日本の生産地付近の集落に顕著なように,多量の須恵器が日常雑器として使用されることとも関連する。同様に,新羅地域でも,古墳への副葬という,当初の陶質土器の目的を離れ,日常雑器として使用される状況がみられた。一方,関東や東北南部で日常的に使用されるのは,土師器が主体であり,群集墳や横穴墓など下位層の古墳に供献される須恵器も少ないが,首長墳に多くの須恵器が供献されることから,須恵器の稀少価値が比較的遅くまで残る可能性が考えられた。
|