2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720213
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
高瀬 克範 Meiji University, 文学部, 専任講師 (00347254)
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Keywords | 考古学 / 民族考古学 / 皮革加工技術 / 石器使用痕分析 / カムチャツカ半島 |
Research Abstract |
2008年8月5〜25日までロシア連邦カムチャツカ地方において現地調査を行った。調査目的は, 20世紀のカムチャツカ半島における先住民女性(主としてコリャーク, エヴェン)による「伝統的」な皮革加工技術の様態を明らかにすることと, そうした技術の歴史的な展開を明らかにすることにある。前者の課題については, V. ペトラシェヴァ氏(ロシア科学アカデミー)の協力を得て, 文献史料の読解や聞き取り調査とともに, 民具資料の物質文化論的な観点からの調査に力点をおき, 道具の形態学的特徴, 使用痕分析, 組成と運用方法などに関わるデータ収集を行った。 後者については, ロシア国立カムチャツカ大学のA. V. プタシンスキー教授の協力を得て, 2007年からカムチャツカ半島北部における古コリャーク文化期(約5〜17世紀)の石製掻器の使用法の研究に着手している。2008年度は, これら石器の年代的位置づけをより確実にし, さらに細分してゆくための基礎研究(土器編年)を行った。さらに, カムチャツカ半島における皮革加工の歴史をさかのぼる資料を収集するために, 半島中央部のアナヴガイ2遺跡の発掘調査を行い, 細石刃石器群の遺跡であることを確認した。放射性炭素年代測定では10870±40との結果がえられている。 論文では, 古コリャーク文化期の掻器の分析結果から, 18世紀〜現在の先住民によって広く使用されてきている「パレオアジア型」とよばれるスクレイパーの起源を考えるうえで重要な事実を公表した。さらに, 本研究のなかで民族誌情報をもとに構築されつつある掻器の運動方向に関わる解釈モデルをもちいて, 北海道の後期旧石器時代前半期の掻器のなかにscrapingとwhittHngの両方に用いられたものが含まれていたこと, 続縄文期の北海道島から出土する磨製石斧のなかに皮革加工具が含まれており, それらは手持ちでwhitthngの動作で用いられていたことなども明らかにした。
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