2008 Fiscal Year Annual Research Report
「里海・里湖」の民俗的資源管理にみる持続可能性の検証と今後のワイズユースへの応用
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18720227
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
佐野 静代 Shiga University, 環境総合研究センター, 准教授 (80273829)
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Keywords | コモンズ / 資源管理 / 水辺エコトーン / 景観 / 二次的自然 |
Research Abstract |
本年は最終年度としで各地での補足調査と成果のとりまとめを行った。まず、「里湖」の代表例たる潟湖の調査については、八郎潟での研究成果およびその応用面としての水辺再生への提言を、環境省の報告書に掲載した。また「里海」の典型としてのサンゴ礁における生業研究についても、昨年までの史料調査をふまえて今年度は聞き取り調査を実施した。特に奄美における伝統的漁撈活動と、共同体による資源管理の長期的動態について分析した。 今年度は、これまで各地の水辺エコトーンを対象に行ってきた水辺の生業史と資源管理に関する研究成果をまとめ、単著として刊行した。沿岸住民による中世以来の水辺の資源利用・管理の実態を検証し、「里湖」としての地域システムを解明することが、今後の水辺の生態修復にも不可欠な視角となることを提起した。これら本研究の応用的側面については、論文・著書だけでなく地域の水辺保全・再生に関する集会でも広く発表し、成果の還元につとめた。 なお、サンゴ礁海域に関しては、その生態系における人間活動の位置づけの解明は、歴史地理学的手法だけでは限界のあることも痛感した。海域の生態系の検証には、物質循環や生態学的調査が不可欠であり、「里海」の実像の解明には、本研究で得た知見に加えて学際的なアプローチが必要となる。今後他分野との協業により、この点について引き続き検討していきたい。
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