2008 Fiscal Year Annual Research Report
オーストラリアにおけるアジア系留学生の急増と都市グローバル化へのインパクト
Project/Area Number |
18720229
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
堤 純 Ehime University, 法文学部, 准教授 (90281766)
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Keywords | オーストラリア / GIS / 都市 / 留学生 / グローバリゼーション |
Research Abstract |
本研究は, 主としてオーストラリアのシドニーとメルボルンを対象に, 全大学生定員の約25%にまで急拡大した留学生(大半はアジア出身者)に着目して, 彼らが作り出す「在学期間中のみ」という特殊な賃貸借需要という視点から, 都心部を中心にみられる高層・高級住宅の急増との関連を考察した。 1990年代以降にメルボルン市でみられた高層住宅開発は, 当初は, 子育て終了後の比較的裕福な中高年層を主な入居者と想定したものであった。その後の高層住宅開発の拡大は, オーストラリア国内の好景気も後押しして投機ブームが起きたことによる。こうした投機目的によって購入された高層住宅の多くは, 不動産賃貸実務を請け負う会社を通じて, 賃貸用として利用されている。CBDを中心としたメルボルン市における高層住宅の居住者は, 従来の研究で指摘されるような若年高所得者や裕福な中高年層に限らず, 3〜4人で共同生活(ルームシェア)を送る留学生が大きな割合を占める。すなわち, これらの住宅にとっては, 潜在的な需要の発生源としての留学生の存在が重要である。この背景には, 1980年代半ば以降, オーストラリア国内における, 留学生関連の教育政策の急激な変化が挙げられる。その結果, 留学生数は増大し, さらに国費留学生中心から, 自ら学費を払う留学生中心へと大きく方針転換された。急増した留学生はメルボルン市の人口増加にも大きく寄与しており, 関連する商業やサービス業などの雇用へも好影響を与えていると考えられる。そして, 留学生の受入れはグローバルマーケットへの教育サービスの輸出という側面をもち, オーストラリアの都市成長を牽引するほどのインパクトをもつことが示唆された。こうした変化は, 従来のグローバル化と都市発展の議論とは異なる性格のものであることがわかった。
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