2007 Fiscal Year Annual Research Report
ナイジェリア・イボ人移民による擬制的王制の創造に関する研究
Project/Area Number |
18720237
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
松本 尚之 Toyo University, 国際共生社会研究センター, 研究助手 (80361054)
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Keywords | 文化人類学 / 民族学 / 移民研究 / 都市研究 / ナイジェリア |
Research Abstract |
本研究の目的は、ナイジェリアの都市部でイボ人移民たちが故郷の文化を模倣して創造した擬制的な王制/首長制の調査を行い、アフリカ諸社会において王位・首長位が持つ今日的な意味を考察することにある。平成20年度は、研究実地計画にのっとり、日本及びナイジェリア(3週間)におけるフィールド調査を行った。 日本におけるフィールド調査では、滞日イボ人たちが組織している同郷団体の調査を通して、日本における擬制的王制創造の過程を調査した。しかし、日本のイボ人移民社会におけるエゼ・イボ選出の議論はほとんど進展がないことが判明し、引き続き今後の展開を見守る必要がある。 ナイジェリアにおけるフィールド調査では、旧首都ラゴスを調査対象地とし、同地における擬制的王制についてデータを収集した。ラゴスの擬制的王制(エゼ・イボ制度)の現状について聞き取り調査や参与観察を行うとともに、ホストの立場にある民族や州政府・地方政府、イボ人を対象とした同郷団体からの承認状況について関係者を対象としてインタビューを行った。その結果、エゼ・イボが自らの正統性の拠り所として政府やホスト社会、同郷団体の承認を強調する一方で、それら組織とエゼ・イボとの結びつきはフォーマルな関係ではなく、インフォーマルな個人的関係に過ぎない実態が明らかとなった。このことは、今日のアフリカ国家のなかで非集権制社会の指導者たちが自らの存在をいかにして権威づけているかを分析するうえで重要であり、国家に包摂された現在の政治社会的文脈において非集権制社会の伝統的な政治構造の持続と変容に関する貴重なデータとなると考える。
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