2008 Fiscal Year Annual Research Report
ナイジェリア・イボ人移民による擬制的王制の創造に関する研究
Project/Area Number |
18720237
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
松本 尚之 Toyo University, 国際地域学部, 助教 (80361054)
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Keywords | 文化人類学 / 民族学 / 移民研究 / 都市研究 / ナイジェリア |
Research Abstract |
本研究の目的は、ナイジェリアの都市部でイボ人移民たちが故郷の文化を模して創造した擬制的な王制/首長制の調査を行い、アフリカ諸社会において王位・首長位が持つ今日的な意味を考察することにある。平成20年度は、在日イボ人を対象とした補足的な聞き取り調査を行うとともに、これまで得たデータの分析を行った。その結果をもとに、いくつかの研究成果の発表・公開を行った。 データの分析の結果、擬制的王制創造の背景に、イボ人移民たちの心的変化があることが明らかとなった。擬制的王制を指示する移民たちは、王を故郷の民族文化を象徴する存在と見なしている。しかしその一方で、擬制的王制に対する故郷の人々の反応は非常に否定的である。擬制的王の地位に就いた者は、対象となる都市に居住するイボ人移民たちを代表する「王」であると主張する。しかし、故郷に戻れば、彼らは出身共同体の王に従属する立場である。そのため、擬制的王制の創造は、移住先の都市と故郷の間に権威関係のねじれを生み出しているのである。これまで、故郷を離れ都市部で暮らすイボ人移民たちについては、彼らの多くが移住先の都市において「一時逗留者」の立場にとどまり、都市と故郷を行き来する二重生活を送り続けることが指摘されてきた。しかし、移住生活の不安定化や長期化と共に、自らを「定住者」として位置づけるようになった。多民族が共生する都市において、自らを一時逗留者ではなく定住者と定めた移民たちにとって重要なのは、一つの民族内ではなく、民族の垣根を越えて認知された象徴財である。ナイジェリアのサブカルチャーとして民族を越えて認知された王位や首長位こそ、定住者となった移民たちが都市において自らを権威づけるために必要な象徴材なのである。
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Research Products
(3 results)