Research Abstract |
今年度は,主に,(1)昨年度収集した文献資料の整理と解読,および秋に(2)現地調査を行った。(1)に関しては,特に,ソヴィエト民族学の発展過程の分析を行った。ソヴィエト民族学の発展に於いて必ず注視しなければならないのは,長年民族学研究所の所長を務めたIu.ブロムレイのエトノス(etnos)理論である。これは,ソヴィエト連邦の官製とも言うべき理論体系であり,ソ連型・民族別連邦制を支える正統性の根拠でもあった。従来,官製ゆえに,十分な精読もないまま批判されていたエトノス理論を,内在的に読解し,理論展開のプロセスを微視的に追究した。その結果,確かに官製ではあったが,ソ連社会主義体制とその現実をそのまま追随する内容ではなく,同時に批判する役目も果たしていたことが了解された。この視点は新しいものと言えるが,その新しさは,民族学だけでなく社会学,特に民族学と領域が重なる民族社会学(etnosotsiologiia)の形成過程と議論の特徴を吟味し,民族学と比較することでもって,得られた。この成果については,2008年度,一本の論考として公表される予定である(掲載許可済み)。(2)2007年9月,ロシア連邦のハバロフスク市とブリヤート共和国にて民族誌的現地調査を行った。(a)ハバロフスクでは,地方行政に於いて社会運動と環境政策についてヒアリングを行い,(b)ブリヤート共和国では最新の研究について情報収集しつつ,青年組織・社会運動・宗教「復興」などについてヒアリングと参与観察を行った。(b)については,簡単であるが,成果の小論を2008年4月に発表した。
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