2006 Fiscal Year Annual Research Report
フランスにおける連帯経済の生成に関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
18720242
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 理 大阪大学, 人間科学研究科, 助手 (30402986)
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Keywords | 文化人類学 |
Research Abstract |
本年度、私は研究課題の基盤となる理論的考察を行い、その成果を明らかにした。また、第一次調査を行ない、そのデータをまとめた。 まず、理論的側面においては、本研究課題の基盤となる経済人類学および経済社会学の理論的課題を文献購読によって検討した。とりわけ「経済学の遂行性(performativity of economics)」研究と呼ばれる研究動向に関する文献を収集し、分析した。その成果をまず日本文化人類学会第40回研究大会における研究発表「プロジェクトとしてのモラル・エコノミー:フランスにおける連帯経済の事例」(2006年6月3日於東京大学)において明らかにした。この発表は私のこれまでの調査データを新たな理論的枠組みを用いて解釈したものであり、「経済学の遂行性」は自由主義の方向に進むものばかりでなく、モラル・エコノミーの構築の方向にも進む可能性を持つという視点を示すものである。さらに、この発表を基礎としてさらに分析を推し進め、論文「地域通貨:社会に埋め込まれた経済、再び?」を執筆した。同論文は論文集『人類学への招待』(春日直樹編、ミネルヴァ書房刊)に所収され、2007年10月に出版される。 このような理論的考察の発展と並行して、第一次のフィールドワークを実施した。フィールドワークは2006年9月11日より9月28日まで、フランス、アルプ・ド・オート・プロヴァンスにある連帯食料品店プロジェクトにおいて実施した。同調査によって、従来の地域通貨方式による食料分配システムがどのように連帯食料品店へと変化しているか、聞き取りと参与観察を通してデータを収集した。これまで蓄積してきたデータに今回の調査データを加味し、論文「資源化に抗する地域通貨」を執筆した。同論文は論文集『資源人類学5:貨幣と資源』(春日直樹編、弘文堂刊)に所収され、2007年10月に出版される。
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