2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代化過程における遺影の展開と死生観の変容に関する民俗学的調査研究
Project/Area Number |
18720249
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
山田 慎也 National Museum of Japanese History, 研究部, 准教授 (90311133)
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Keywords | 遺影 / 葬制 / 岩手 / 死 / 写真 / 葬儀 / 葬祭業者 / 寺院 |
Research Abstract |
本研究では、岩手県を中心にして、寺院への遺影の奉納習俗をとりあげ、遺影が奉納された死者の性格を検討し、その使用の目的の変遷を明らかにすることで、遺影の成立が国家形成の影響を指摘できるおけでなく、さらに死の意味づけの変容、つまり、近代化の中で死後の存在を前提に安楽を祈ることから、人生の決算と生の顕彰におおきく関心が移行していることについて分析することを目的としている。 そこで最終年度である本年度は、岩手県中央部の紫波町や遠野市、花巻市の調査を行った。また北上市、宮古市など調査、分析も継続した。岩手県中央では供養絵額を奉納する風習があり、それが次第に遺影に替わっていくことがわかっていたが、供養絵額のある地域の寺院は数は少なくなっているものの比較的保存しやすい傾向があることも明らかになった。また写真ははずしても絵額だけは保存している寺院もあった。そこでは遺影は喪家だけでなく、友人や弟子達など複数人の奉納も行われており、やはり特別の追悼や供養の側面が大きいことがわかった。こうした遺影は夭折の死者炉比較的多く、長寿を全うしたものが後の時代になると多くなっていくことがわかった。 つまり岩手県中央部など供養絵額奉納の習慣のある地域では、夭折の死者を供養するという絵額の延長上に軍人や夭折の死者などの遺影を奉納するようになっていき、しだいに長寿を全うする死者まで死者一般に拡大していき、遺影を用いた死者の個別供養が一般的になっていくことがわかる。また絵額の奉納がない岩手県の周辺部では、遺影の奉納の慣習ができあがっていくがやはり、ここでも当初は夭折など特別の供養を必要とする死者が中心となり、それが次第に一般の死者に拡大していくことがわかった。
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