2008 Fiscal Year Annual Research Report
タンザニアにおける土地所有権―法規定と土地市場の実態の比較―
Project/Area Number |
18730004
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
雨宮 洋美 University of Toyama, 富山大学経済学部, 准教授 (90401794)
|
Keywords | 法社会学 / アフリカ / 開発 / 所有権 / 貧困問題 |
Research Abstract |
拠点として比較的市場化が進んでいるタンザニア国ムベヤの村において、慣習的並びに合法的な土地所有および土地市場の実態調査を継続的に行い、現在も村では一般的である慣習的土地所有の事例分析を積み重ねるとともに、都市部においての資料収集並びに宗主国イギリス(タンザニアの植民地時代の宗主国)における法文および公文書資料調査を行い、村における土地所有形態の実態と法規定との関連を明らかにすることを目的とし調査研究を行なった。なお、イギリスでは、植民地時代の土地法およびタンザニア「1999年村土地法」制定過程に関連する資料の収集を行い、現段階におけるタンザニアの村土地法規定の意味と、法規定の問題点を実態調査における結果をもとに明確化し毎年、論文・学会報告で成果を発表し続けた。 1999年に制定され2001年から施行された「村土地法」であるが、村では2009年調査時点まで、実質的施行には至らず慣習的な権利確定、紛争処理・裁定が行われている。2005年~2009年までの調査概要を総括すると、むしろ当初の方が制定法への移行の努力が村レベルでは行なわれていたが、近年になり制定法化への移行は意識されなくなり従来どおりの慣習による営みが定着化している傾向がある。なお、村に帰属しない狩猟採集民が近代的土地所有を意識した法適用により古代より慣習的に有していた広大な土地利用から締め出され、民族としての文化・社会変容を迫られ土地を失う事態に直面していることが明らかとなった。近代的土地所有権導入過程における問題の一つとして、民族多様性と近代的土地所有権の問題について検討する必要性があることが新たな課題として表面化した。慣習的権利の変化の動向、狩猟採集民の状況について、市場経済化との軋轢はますます大きくなるので、今後も継続的に観察する必要がある。
|