2006 Fiscal Year Annual Research Report
フランスにおける社会的調停の概念と機能に関する調査研究
Project/Area Number |
18730008
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
高村 学人 東京都立大学, 法学部, 助教授 (80302785)
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Keywords | 法社会学 / フランス法 / 調停 |
Research Abstract |
研究初年度である今年度は、まず第一に、基礎作業として、最近、活況を見せている日本におけるADR論に関する文献、また自治体による紛争解決に関する文献を網羅的に蒐集し、日本の法社会学がこれまでどのように調停という制度を評価していたのか、ADRという概念をどのように他の国から受容したのか、その後、司法改革の影響化で、このADRという概念が日本的にどのように変容しそいったのか、を明らかにすることに努めた。 この基礎作業は、この研究課題を公表していく際に、フランスにおける社会的調停の特色をきちんと位置づけるのに重要な役割を果左すであろう。 第二に、フランスにおける社会的調停の概念や先行研究を調べるために、フランスの研究者による調停の実証研究、郊外地区の社会学的研究についての文献を蒐集し、丁寧に読み込んだ。 フランスにおいて最近、盛んに用いられる「メディアシオン(調停)」という概念は、紛争処理様式の一つを指すのではなく、衰弱した郊外地区において住民間の信頼醸成、社会紐帯の強化に仕える仕会的役務、犯罪抑止のためのNPOなどによるパトロール活動についても用いられているということがわかった。 第三に、2006年2月にフランス・パリに調査出張を行い、都市改善省やフランスの研究者へのヒアリング調査、問題が多いとされる地区の近隣住区評議会の観察調査を行った。調査前は、2005年秋のフランスの郊外暴動以降、「社会的調停」というアプローチ法に陰りがあるのではないか、という懸念もあったが、むしろ反対で、暴動がなかった地域ほど、この「社会的調停」がよく機能しており、暴動以降、との制度に一層の期待がかかっていると言うことが明らかになった。また研究協力ネットワークづくりもしっかり行えた。 次年度は、より長期間の現地調査により「社会的調停」の機能を明らかにする予定である。
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