2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730009
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
瀧川 裕英 大阪市立大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (50251434)
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Keywords | 政治的責務 / 自然状態 / ホッブズ / 普遍化可能性 / ドゥオーキン / 権力分立 / アカウンタビリティー / グローバリゼーション |
Research Abstract |
平成18年度は、(1)政治的責務を正当化する諸理論の類型化・定式化・検討と、(2)国民が政治的責務を負う国家が、健全に作動するために必要な統治機構の条件の検討を行った。 (1)政治的責務諸理論の中で、特に注力して検討したのは、(1)ロックらの同意論(社会契約論)、(2)ホッブズ、ゲーム理論などの自己利益論、(3)ハート、クロスコらのフェア・プレイ論、(4)ドゥオーキン・マッキンタイアらの関係的責務論である。(2)の自己利益論について、ホッブズの理論は社会契約論というよりは自己利益論(自己保存論)として理解すべきであること、国家が調整問題を解決する能力には限界があること、自然状態が囚人のジレンマになってしまうのは主に人間の高慢に原因があること、などを内容とする研究報告を行った(2006.7 関西法理学研究会 於 同志社大学)。(3)のフェア・プレイ論について、フェア・プレイの観念が前提とする普遍化可能性の概念を、カントの議論を手掛かりに徹底的に分析し解体した(「公共性のテスト--普遍化可能性から公開可能性へ一一」『公共性の法哲学』(ナカニシヤ出版,2006)所収)。(4)の関係的責務論について、その総体をアイデンティティー論、アナロジー論、共和主義へと類型化し、それぞれの議論を定式化し意義を検討しつつ批判する論考を執筆した(『法学雑誌』54巻1号(2007.8)掲載予定)。 (2)国民が政治的責務を負う国家が、健全に作動するための統治機構の条件として、権力分立論について原理的な考察を行った(「権力分立原理は国家権力を実効的に統御しうるか」井上達夫他編『岩波講座 憲法 第1巻』(岩波書店、2007.4所収)。また、国連大学主催の国際シンポジウムで、グローバリゼーションが進行する現代世界では民主主義の赤字は避けられず、統治機構の健全な作動にはむしろ公開とアカウンタビリティーに期待せざるを得ないと主張する報告を行い、諸外国の研究者と意見交換を行った("Conceptual Analysis of Accountability : The Structure of Accountability in the Process of Responsibility" 2006. 10 at UNU.本報告を含む報告集は、国連大単出版会から2007年に出版予定)。
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Research Products
(1 results)