2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730018
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲葉 一将 名古屋大学, 大学院法学研究科, 助教授 (50334991)
|
Keywords | New Public Management / Privatization / 委任禁止法理 / 実体的デュープロセス / 行政手続法 / 契約 / 公法と私法 / 政府固有機能 |
Research Abstract |
公権力主体たる行政が国民の任意性を排除して、権力的行為によって公共的価値を実現すべきという伝統的なガバメントモデルの変容について、一つの有力な潮流であるアメリカを対象として、変容の背景を検討するのが今年度の研究内容であった。本研究課題の一つの柱である行政機関から私人への権限の委任を中心にとりあげつつ、その背景に存在するであろうNew Public ManagementあるいはPrivatizationという(法)イデオロギーの生成することとなった背景や現象形態を整理したことが、今年度の研究実績であった。 まず、その背景については、法目的を実現する既存の手段の機能不全とりわけ民主主義的手続の形骸化やそれを克服するための司法審査の強化による行政過程の遅延が、行政による権限行使に見直しを迫るものとなっているように思われる。『名古屋大学法政論集』に掲載した成果では、その内容をやや具体的に整理するとともに、『法律時報』に掲載した論文においては、そのような規範的要請とそれとは区別される経済的要請との混在を指摘した。 次に、アメリカの憲法行政法学において把握されているPrivatizationの諸現象を整理した。この概念をめぐっては、法的限界と民主的コントロールが盛んに論じられている。『名古屋大学法政論集』に掲載した論文では、委任禁止法理および実体的デュープロセスという民主主義原理および人権保障要請の存在を指摘した。『法律時報』の論文では、行政機関が規則形式により定めていた規制基準が住民も交えた私人との契約によって代替された場合であっても、契約締結に対する行政手続法の適用が学説においては有力に主張されているなどのアメリカ(行政法)の現況を紹介した。
|