2008 Fiscal Year Annual Research Report
相互承認原則-EU法における適用範囲の拡大と国際私法理論におけるその意義の検討
Project/Area Number |
18730031
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 康 Kyoto University, 法学研究科, 教授 (50263059)
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Keywords | 相互承認 / 外国判決の承認 / 子の奪い合い / 新ブリュッセルII規則 / 双方主義 / 一方主義 |
Research Abstract |
本年度は, 以下の点について, 相互承認原則の位置づけに関する検討を行った。 まず, EUにおける離婚および親責任に関する国際裁判管轄、準拠法、判決の承認についてのいわゆる新ブリュッセルII規則と、1980年のハーグ子の奪取条約に関する、欧州司法裁判所の判決を検討した。子が国際的に奪い合いになった場合に、子の元の常居所地国への即時の返還を確保する ハーグ子の奪取条約を、新ブリュッセル規則は、元の常居所地構成国の返還命令の、子の奪取先の構成国における承認執行を特別に容易にすることで、強化している。ここに表れている、判決の相互承認について、その意義および問題点を, 欧州司法裁判所の判決を通して、検討した。この判決の検討については、論文にして公表した。 次に, 研究最終年度であるので、EUにおける相互承認原則に関する議論を再検討した。準拠法選択と外国判決の承認という、国際私法における2つの方法の観点から見ると、相互承認原則は承認という名称は付いているものの、判決承認に分類されるわけではないことが明らかになった。しかしながら、このような検討だけでは、相互承認原則の本質を捉えられ切れていないことも明らかになってきた。むしろ視点を変えて、法廷地国が双方主義的な準拠法選択規則及び外国判決承認ルールで渉外的法律関係を規律し尽くそうとしているのに対して、一定の場合には例外的な救済が必要であり、その1つの現れが相互承認原則ではないかと思われる。この観点から、例外的救済の必要性について、EUの相互承認原則を他の場合と比較検討して、共通する理由を考えていくことが今後の課題である。
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Research Products
(1 results)