2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730033
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Research Institution | Siebold University of Nagasaki |
Principal Investigator |
岩本 禎之 (李 禎之) Siebold University of Nagasaki, 国際情報学部, 講師 (20405567)
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Keywords | 国際司法裁判所 / 固有の権限 / 手続裁量 / 判決理由 |
Research Abstract |
平成19年度は,判決形成,とりわけ判決理由の選択に関する「固有の権限」論の論理構成を明らかにすることを目的として,関連判決および訴訟記録の分析を行った。まず,未成年者後見に関する1902年条約の適用事件(1958年判決)から,裁判所は申立てから請求と理由とを分離できること,および判決の基礎とする理由を選択する「自由」が一定の申立ての排除を可能とする法理として利用されたこと,が確認された。しかし,その後の判例における本件の援用をみると,オイル・プラットフォーム事件(本案,2003年判決)では,全く異なる文脈(当事者の申立てにない裁判所の判断)において裁判所の処理を正当化するために利用され,武力行使の合法性事件(先決的抗弁,2004年判決)にいたっては,理由選択自由の法理の適用自体が否定されているのであった。これら判例からは,理由選択自由の法理の適用に一貫した基盤を見出すことが困難である。つまり,判例研究によって,裁判所の言う判決理由の選択は共通する法的根拠を欠いており,そうした裁量行使を制約する原理も存在していないことがわかった。こうした裁量行使を「固有の権限」という概念により基礎付けることは,裁判所の恣意的な判決形成を正当化するのみであり,法的安定性を著しく毀損するように思われる。本年度の研究からは,「固有の権限」として裁判所の裁量行使を根拠付ける立論が理論的限界を有することが明らかになったといえる。
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